にほんのひのまる
なだて あかい
かえらぬ
おらがむすこの
ち で
あかい 釣れぬ魚 から抜粋
言葉
還って来なければならない人々が
死んでしまって
還って来なくともいい奴らが
生きて還って来て
空は今日も
錆びた血の海
死んではならない人々が
群勢で死んでしまって
死ななければならない奴らが
彩られた血痕の扉の奥で
まだ
生きている
<遺された人々の心衷を想えば
今も胸が痛みます>
感動のない余韻を残して
今年もまた
扉の裏側へと消え去る
それが八月十五日
日本の
八月十五日
勲章
大満州国建国功労章
嫁(き)たばっかりのおらを残して
征(い)ってしまうかエ
征かねばなんねえのかエ
別れの遺品(しるし)にしては
冷たすぎるものを置いて
大満州国周年記念
ああ早く帰って来てくれ
まだ見ぬ嬰児(このこ)の顔をみたいと
想うだろうに
果てどない夜々の疼きの音を
訊いてくれ
支那事変従軍記章
またしても征ってしまうのかエ
わたしとおんなじ
鍬しか握ったためしのない人々の前に
あんたはそれでも討つ手を持っていると
云いなさんのかえ
ほら
父さんの顔”怖い”と
この児ですら泣いている
オモチャにもならぬ勲章を
後生大事に抱えて
勲八等白色十葉章
”お国のために
よく働いたで
おかげで
おやあの顔はむらの花”
そんな言葉は一度だって吐いた覚えはない
言葉が存るとすれば
昏れ刻
独り顔を土に埋めてあんたの名を呼ぶだけ
勲七等青色桐葉章
いくさは怖かろうに
恐ろしかろうに
渇れた涙を受ける器もなかろうに
それでも勲章は憑いて廻るのかエ
勲五等白色桐葉章
あれほど働いて
これがあんたの生涯かエ
薄すぎる命でないかエ
小さすぎる勲章でないかエ
悔しくあないかエ
今度生まれて来る時あ
勲章なんか下さらん
国へ
生まれて来なされ
山形県立図書館から取り寄せて借りた詩集。その一部であるが、心に刻んでおきたい。



