平成29(2017)年3月19日 西日本新聞 朝刊 子どもに明日を=知的障害児に家庭的ケアを 施設入所の4割 虐待経験 小規模化遅れ「置き去り」 自立を支援する「福祉型障害児入所施設」のうち、知的障害児施設で虐待経験のある子の割合が高まっている。児童虐待が社会問題化し、保護される子が増えたことなどが背景にある。適切な愛情を受けて育たなかった子には家庭的な環境できめ細かなケアが望まれるが、公的支援が乏しく、小規模化が進んでいない。関係者は「置き去りにされる」と危機感を強める。 厚生労働省によると「福祉型」は全国に263カ所あり、うち236が知的障害児施設。日本知的障害者福祉協会の調査では2014年度、全国162施設に新たに入所した741人の中で、325人(44%)が親などから虐待を受けていた。02年度は10%、05年度は30%、11年度には53%で過去最高となり、以後も40%台で高止まりしている。 児童養護施設でも6割が虐待を経験。そこで国は小規模ケア化(6〜8人)を促し、14年度には7割の施設で実践された。一方「福祉型」は15%にとどまり、30人以上が集団生活する大規模施設が多い。施設の小規模化や専門性の高い職員の配置が必要だが、国や自治体の障害児施策の遅れから公的支援が乏しい現状がある。 知的障害がある場合、親の思い通りに行動してくれず、虐待に至る危険性が高いともいわれる。西南学院大の野口幸弘教授(障害児支援)は「家族を支える制度も態勢も不十分。施設に対する国の定期的な調査もなく、実態がほとんど知られていない」と指摘する。 ○愛着形成手探り 公的支援も乏しく 知的障害児の入所施設はこれまで、障害の特性が理解されないことで不適切な行為に至る「行動障害」に対応してきた。だが、愛着の形成は、専門外ともいえる分野。愛情をどう結び直すか、現場では手探り状態が続いている。 好意を持つ相手の服を盗み、破ってしまう−。九州のある施設に入所する少年は、こうした行動を繰り返していた。行動障害に対する通常の対応は、きっかけをつくらないこと。例えば、外出を制限すれば盗もうにも盗めない。だが、改善は見られなかった。 職員は対応を話し合う中で生い立ちに目を向けた。父親は不明、母親は育児放棄。入所後も1年ごとに担当職員が代わり、特定の他者と愛着を結べないまま育っていたことが分かった。 どうアプローチすればいいのか−。福岡市南区の「若久緑園」でも、入所者75人のうち7割に虐待を受けた経験があり、中村隆園長は「問題の根っこが違い、同じ対応では改善に向かわない」と試行錯誤の毎日という。 愛着に問題がある場合、家庭的ケアが効果的とされるが、若久緑園では四つの寮で約20人ずつが集団生活を送る。「食事、掃除、入浴と集団を動かすのに精いっぱい。一人一人をもっと受け止めて褒めてあげたいのに」。男性職員は嘆く。 鹿児島市の「あさひが丘学園」は昨年、施設を小規模化した。入浴や洗濯ができる生活設備と全員分の個室を備えたユニットを四つ設け、7人ごとに分かれて生活するようにした。水流純大理事長は「職員と子ども一人一人が関われる時間が圧倒的に増えた。関係が深まり、情緒が安定してきた」と効果を語る。 ただ、ユニット化に当たっては、事業費の2割程度しか公的補助を受けられなかった。財政に余裕のない施設だと、建て替え自体が難しくなる。 また、障害者の自立支援を巡っては、2003年に自治体の措置から、利用者が福祉サービスを選べる契約制度に変わり、在宅で生活できる障害児の入所が減ったことも、被虐待児の割合を高めた要因とされる。水流理事長は「その分、対応が難しく、専門性の高い職員が必要になる。早急な制度の充実が必要だ」と訴える。
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