市長の決断

 住民基本台帳ネットワーク(住基ネット)は,[プライバシー権を侵害し違法]として、大阪府箕面市など府内5市の住民16人が、住基ネットからの離脱や1人5万円の慰謝料などの支払いを求めた訴訟の控訴審で、11月30日、住民4人の離脱を命じる判決が大阪高裁で出された。
 判決は、慰謝料請求については退けたが、敗訴した豊中、八尾市の住民12人は慰謝料だけを請求したもの。住基ネットの離脱を主に主張していた住民側にとっては実質的な全面勝訴だった。
 当該の自治体がどのような判断をするか、注目されていた。守口市、吹田市は上告。箕面市の藤澤市長は、上告しないという決断をした。
 
 以下、12月7日 本会議での藤澤箕面市長の報告。人権を守る立場の市長としての決断は立派なものである。
 


本日、新たに本会議をお開きくださいまして、まことにありがた
く思います。充分に考慮する時間をいただきたく思い、判断が今に
なってしまいました。
 この「住基ネット損害賠償請求事件」高裁判決は去る11月30
日にだされました。
 控訴人の請求の趣旨は、住民票コードを含んだ本人確認情報を住
基ネットに接続したことによって人格権や自己情報コントロール権
等が侵害されたとの理由で「5万円の損害賠償」「大阪府への通知
禁止」「住民票コードの削除」を求めたものでした。
 判決は、住民票コードを削除することのみを認め、その他の請求
については棄却しました。
 この高裁判決は、住基ネットシステムは住民サービスの向上及び
行政事務の効率化に役立つところがあり、セキュリティに関しては
問題ないという姿勢であり、ただ、データマッチングや名寄せによ
って、個人のプライバシー情報が本人の予期しない範囲で行政機関
に保有され利用される危険があるというものです。つまり、住基ネ
ットの利点は認めながらも危うさを指摘したものです。
 私自身も、住基ネットシステムが適正に制度化され運用されるの
であれば、住基ネットシステムは、電子政府・電子自治体を目指し、
行政効率を高め、住民の利便性の向上に寄与するものであるという
認識ではいます。住基カードや電子認証などのサービスを申請する
人はまだまだ、低調な状態です。全国的にも0.7%といわれ、箕
面でも住基カードが668件0.5%、しかも本来の目的外の高齢
者の身分証明書としての申請が増加していると云われています。公
的個人認証サービスについては147件(0.1%)にしかすぎま
せん。全国でも同様の状態です。
 そのような中で、住基ネット導入時には、93件だった適用対象
事務は現在275件にと拡大し続けています。改正住民基本台帳法
成立時の「住基ネットの安易な利用拡大は行わない」という付帯条
件が守られていると言いがたい状況です。自分の知らないところで、
自己情報がやりとりされることについて、歯止めが利かないことに
不安を感じる控訴人の心情は充分に理解できます。
 判決文のなかで、防衛庁の適齢者情報収集に際し、住民基本台帳
法で閲覧が認められている情報以外の内容まで自治体から提供を受
けていたことが明らかにされています。また12月5日付け朝日新聞・
社説によると住基ネットをNHKの受信料集めに利用することも検
討されていることにふれ、「利用範囲がどこまで広がるか、不安は
さらに募るだろう」と掲載されています。
 判決文はそのような不安を取り除くためには法整備が欠かせない
うえ、第三者による監視機関を設ける必要があるとしています。
 箕面市行政のなかでは、個人情報保護条例などにより厳格に市民
の方々の個人情報は扱われていますが、これが住基ネットへの接続
によって、想定されていない事務等に利用されることを心配されて
いる方がいれば、そして、住基ネットによる利便性を享受するより、
プライバシーを重要視する人が、離脱を主張するのであれば、危険
性が想起されるかぎり、住民票コードの削除を認めるべきだという
本判決を私は支持します。
 判決後、職員と共に様々な角度から、この判決を吟味しました。
この判決が確定した時に起こりうる事象について、多くの人のアド
バイスを得、職員との意見交換に長時間掛けました。
 住基ネットシステムに関わっている職員からは控訴人の住民票コー
ドを削除することについて、システムの問題、運用の問題、他のシ
ステム運用への影響の問題を検討する必要があるとして、最高裁判
決を待って実施すべきであることを終始主張していました。業務に
携わる職員の気持ちは充分理解できます。
 しかし、私は住基ネットからの離脱を望んでいる市民にまで強要
することはプライバシー権を侵害し憲法13条に違反するというこの
高裁判決を重く受け止め、最高裁判決に委ねるのではなく、人権を
守る立場の自治体の長として、この判決を確定させることを決めま
した。 
 さらに今後、他の市民が住基ネットシステムから住民票コードの
削除を求める可能性がありますが、その対応については法的、技術
的側面からの検討を加え、結論をだしていく所存です。
 以上よろしくご理解いただきまして、今後の行政運営にご協力い
ただきますようお願い申し上げます。

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